国民生活センターの調査(2019年12月12日公表/2024年11月21日更新)で、ベビーカーごと転倒した原因の1位は「ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物」203人(71%)。SG基準の安定性を満たした7銘柄でも、ハンドルに3kgを掛けると転倒に至る角度は約15度小さくなりました。
荷物はハンドルではなく、座席下のカゴへ。これが国民生活センターの調査(2019年12月12日公表/2024年11月21日更新)から出てくる答えです。
アンケートで、ベビーカーごと転倒した原因の1位は「ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物」203人(71%)。2位の「段差、傾斜、障害物」61人(21%)を大きく引き離しています。そして荷提げフックを付けている人は732人(73%)。
テストの数字はもっと直接的です。乳児ダミー人形を乗せて登り方向に置いたとき、転倒に至る角度はハンドルに3kgを掛けない場合が約17〜27度、掛けた場合が約1〜12度。約15度小さくなりました(背面の場合)。しかもテストした7銘柄は全部、SG基準の安定性を満たしています。製品の問題ではありません。
この記事でわかること
- 転倒の原因と転落の原因が、まったく別の顔をしていること(同じ286人に聞いた結果)
- 荷提げフックを付けている人の割合と、実際に何を掛けているか
- 掛けている人の88%が「危ないと思ったことがある」と答えていること
- 「約15度小さくなる」テストの条件を、全部(ダミー人形の体重、フックの位置、荷物の中身まで)
- 「じゃあ何kgまでならいいのか」に、国民生活センター自身が何と答えているか
- カゴの容積・上限と、94%が使いながら25%が「使いづらい」と答えている実態
- 私の手元のベビーカーのカゴに縫い付けてあった、警告ラベルの話
実体験メモ
先に立場を書きます。2026年10月に第一子(娘)が生まれる予定で、私の育児経験はゼロです。ベビーカーはNUNAの「IXXA swiv」フォレストを購入し、実物が届いて開封と組み立てまで済ませました。
この記事を書こうと思ったきっかけは、その組み立ての最中です。座席下のカゴに、警告ラベルが縫い付けてありました。ラベルには「KATOJI」の表記もあります。買う前、私はカゴを「荷物入れ」としか思っていませんでした。わざわざ縫い付けてある注意書きを見て、はじめて荷物の置き場所は安全に関わる話なのだと気づき、公的な調査を探した——それがこの記事です。
ちなみに日本公式サイトの製品ページには、カゴの耐荷重の記載がありません(2026年8月時点)。だから私はこの記事で、自分の機種の耐荷重の数値を書きません。書けるのは、国民生活センターが調べた別の7銘柄の値までです。
そして私はこのベビーカーをまだ一度も押していません。荷物を掛けてみた話、買い物で使った話、赤ちゃんを乗せた話は一切書けません。書けるのは、押す前に数字を調べた記録だけです。
この記事の情報の扱いについて
本文の数値は、国民生活センター「ベビーカーの転倒による乳幼児の事故に注意」(2019年12月12日公表/2024年11月21日更新)の報告書PDF(全29ページ)を直接読み取ったものです。あわせて国土交通省「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会 とりまとめ」(平成26年3月)を参照しています。
この調査はアンケートとテストの組み合わせで、公表から5年以上が経っています。アンケートは2019年8月に1,000名へ実施、テストは7銘柄が対象で検体購入は2019年9月です。7銘柄は現在市販されている全製品の傾向ではありません。また本文で扱う「◯%」は、いずれも回答者内の割合であって、事故の発生率ではありません。
この記事は取扱説明書の代わりにはなりません。積載の上限や使用条件は製品ごとに異なります。必ず製品同梱の取扱説明書、カゴの警告ラベル、メーカー公式の記載に従ってください。お子さまのけがや発育に関する判断は、自己判断せず医師にご相談ください。
転倒の原因の1位は、段差でも坂でもなかった
まず全体像から。医療機関ネットワーク事業には、ベビーカーに関する事故で乳幼児が医療機関を受診した事例が、2014年度以降の約5年間に336件寄せられています。内訳はベビーカーごと転倒した事例が104件(31%)、乳幼児が転落した事例が184件(55%)。この2つを合わせた288件が、報告書の冒頭に出てくる数字です。
そのうえで、国民生活センターはアンケートを行いました。2019年8月、子どもがいてベビーカーを所有・使用しており、最もベビーカーを使う子の年齢が4歳未満の男女1,000名(20〜50歳代、男女比1:1)が対象です。
「ベビーカーが転倒した、あるいは子どもが転落した経験はあるか」に「ある」と答えたのは286人(28.6%)。この286人に原因を聞いた結果が、この記事の起点です。
| 転倒または転落の原因(n=286・複数回答) | 転倒の原因 | 転落の原因 |
|---|---|---|
| ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物 | 203人(71.0%) | 67人(23.4%) |
| 段差、傾斜、障害物 | 61人(21.3%) | 49人(17.1%) |
| 子どもの姿勢(身を乗り出したなど) | 38人(13.3%) | 51人(17.8%) |
| 子どもが自分で乗り降りした | 23人(8.0%) | 51人(17.8%) |
| シートベルトをしていなかった | 21人(7.3%) | 54人(18.9%) |
| その他 | 5人(1.7%) | 31人(10.8%) |
| わからない | 8人(2.8%) | 49人(17.1%) |
転倒の欄だけ、形がまったく違います。転落のほうは20%前後の項目が横並びで、原因が散っています。ところが転倒は、荷物が71%で突出している。ベビーカーが倒れるときの主犯は、段差でも坂でもなく、ハンドルに掛けた荷物だったということです。
この286人という分母について
286人は「転倒または転落を経験した」と答えた人で、上の表はその同じ286人が、転倒の原因と転落の原因の両方について答えたものです(複数回答)。「転倒を経験した人だけの286人」ではありません。
また、これは1,000人の回答者の中での話であって、日本のベビーカー使用者全体の発生率ではありません。「71%のベビーカーが荷物で倒れる」ではありません。「転倒・転落を経験した人に理由を聞いたら、荷物と答えた人が最も多かった」までです。あわせて、これは本人の自己申告であり、原因が第三者によって特定されたものではない点も、そのまま受け止める必要があります。
73%が荷提げフックを付けている
では、実際にどれだけの人がハンドルに荷物を掛ける準備をしているのか。「ベビーカーに後から自分たちで付けた付属品」を聞いた結果です(複数回答、n=1,000)。
| 後から自分で付けたもの | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| ハンドルに付ける荷提げフック | 732人 | 73.2% |
| ブランケットなどを留めるクリップ | 440人 | 44.0% |
| おもちゃストラップ | 302人 | 30.2% |
| レインカバー・日よけ虫よけカバー | 240人 | 24.0% |
| ドリンクホルダー | 215人 | 21.5% |
| クッション | 135人 | 13.5% |
| 何も付けていない | 135人 | 13.5% |
後付け品の中で、荷提げフックが断トツの1位です。「何も付けていない」人(135人)の5倍以上が付けています。フックを買い足そうか迷っているとしたら、それは多数派の行動です。特殊なことをしようとしているわけではありません。そして、そこが問題の中心でもあります。
掛けているのは「買い物袋」だった
もう一段、具体的に見ます。何を、どこに載せているかを聞いた結果です(n=1,000、複数回答)。
| 荷物の種類 | 座席 | 座席下のカゴ | ハンドルの荷提げフック | 載せない |
|---|---|---|---|---|
| 買い物袋(食材など出先で購入したもの) | 76人 | 286人 | 480人(48.0%) | 246人 |
| 飲食物類(ミルク、ベビーフード、おやつ、手口拭きなど) | 55人 | 296人 | 341人(34.1%) | 344人 |
| 財布、スマホなど | 44人 | 85人 | 230人(23.0%) | 640人 |
| 衣類(おむつ、着替えなど) | 71人 | 469人(46.9%) | 226人 | 271人 |
| おもちゃ | 293人(29.3%) | 213人 | 173人 | 349人 |
きれいに分かれています。おむつや着替えのように「着いてから使うもの」はカゴへ。買い物袋・飲食物・財布のように「途中で出し入れするもの」はハンドルへ。報告書もこれを「取り出す機会が多くある荷物や、外出先で購入した商品などを掛ける傾向がみられました」とまとめています。
買い物袋がフックに掛かる480人。スーパーを出て、袋を持って、ベビーカーを押す。手はふさがっている。フックはそこにある。動機として、まったく責められるところがありません。
それでも88%は「危ないかも」と思っている
ここが個人的にいちばん刺さった数字です。
ハンドルに荷物を掛けると答えた620人のうち、548人(88.4%)が「荷物を掛けるとベビーカーが不安定になり転倒するおそれがあると考えたことがある」と回答しています。
知らないから掛けているのではありません。危ないかもしれないと思いながら、それでも掛けている。報告書もそう書いています。
だから、この記事の役割は「危ないですよ」と言うことではないはずです。どのくらい危ないのかを、数字で見えるようにすること。それが次の章です。
「約15度小さくなる」テストの中身を、全部書く
国民生活センターは2つのテストを行っています。順番が大事なので、順番どおりに書きます。
テスト1:7銘柄すべてがSG基準の安定性を満たした
まず、製品側の確認です。テスト対象は、アンケート結果をもとに販売数が多いと考えられる乳幼児1人用ベビーカー7銘柄(検体購入は2019年9月)。
一般財団法人製品安全協会のベビーカーのSG基準(CPSA001、2017年4月1日)を参考に、12度傾斜した台の上に、9kgまたは15kgの円柱形の重すいを座面に載せたベビーカーを前後左右4方向に静置し、転倒しないことを確認しました(3輪のものは3方向)。
結果は、いずれの銘柄もSG基準の安定性を満たしていました。
ここを飛ばさないでください。このあとに出てくる数字は、「基準を満たさない粗悪品の話」ではありません。基準を満たした製品で起きたことです。
テスト2:ハンドルに3kgを掛けると、転倒に至る角度が下がる
条件を全部書きます。ここを曖昧にすると数字の意味が変わるためです。
| テストの条件 | 内容 |
|---|---|
| 乗せたもの | 乳児ダミー人形(株式会社高研 4カ月ベビー しょうちゃん LM-075)/身長約58cm・体重3.9kg(服装込み) |
| 掛けたもの | 3kgのおもりを入れたエコバッグ |
| 掛け方 | 荷提げフックをハンドルの中央から左右に75mm離れた位置に2個取り付け、エコバッグの持ち手をそれぞれに掛ける |
| フックの表示 | 耐荷重:2個使用で3kg |
| 置き方 | 傾斜台を登る方向に静置し、転倒に至る角度を測定 |
そして結果です。
| 登り方向で転倒に至る角度(背面の場合) | 角度 |
|---|---|
| ハンドルに荷物を掛けない場合 | 約17〜27度 |
| ハンドルに3kgの荷物を掛けた場合 | 約1〜12度 |
| 差 | 約15度小さくなった |
「約1〜12度」の下限に注目してください。銘柄によっては、1度傾いただけで転倒に至ったということです。17〜27度なら、意識して坂を避ければ回避できる範囲にも思えます。1〜12度は、そういう話ではありません。
報告書は、注意が必要な場面をこう挙げています。小さく体重が軽い子どもを乗せている場合、登り坂を通行する場合、段差や障害物を通行するために前輪を持ち上げる操作を行う場合。
なお、対面に切り替えられる銘柄では、背面よりも対面のほうが荷物による影響は小さく、転倒しづらくなる傾向があったとも書かれています。「約15度」は背面の場合の数字です。
「何度以上なら安全か」という事業者の問いに、国センはこう答えている
この公表資料には、テスト対象銘柄を出している事業者の1社(株式会社西松屋チェーン)から寄せられた意見と、それに対する国民生活センター商品テスト部の見解が掲載されています(2020年1月28日追加)。事業者側の問いは「何度以上あれば転倒しにくい(安定性がある)とお考えでしょうか?」というものでした。
商品テスト部の回答は、こうです。今回のテストは「転倒に至る角度の差を調べるために実施したもので、何度以上であれば転倒しにくい(安定性がある)と判定しているものではございません」。さらに「ハンドルに荷物を掛けた状態での転倒のしづらさについて定めた規格・基準が存在しない現時点で、当方が具体的数値を述べることは適切ではないと考えております」。
つまり、「◯kgまでなら大丈夫」という線引きは、公的にも存在しません。この記事もその線を引きません。テストで使われた3kgという値も、安全と危険の境界ではなく、差を測るために選ばれた条件です。
製品選びでは埋められない、という話
「もっと転倒しにくいベビーカーを選べばいいのでは」と考える人のために、資料にある2つの記述を並べます。
1つ目。国民生活センターの事業者・業界への要望は、こう書かれています。
消費者のニーズに合わせ、ハンドル周辺に荷物を掛けて使用することを想定したベビーカーも商品ラインナップに加えるなど、さらなる商品開発の検討を要望します
これは裏を返せば、テストした全銘柄がハンドルに荷物を掛けて使うことを想定していなかったということです。報告書もはっきり「今回テスト対象とした全ての銘柄で、ハンドルに荷物を掛けないよう警告表示がされており、ハンドルに荷物を掛けて使用することを想定していませんでした」と書いています。
2つ目。前掲の事業者からの意見では、試験条件の違いが指摘されています。
SG基準による安定性評価が実施されておりましたが、条件は9kg、15kgのおもりを座面に載せ、12度傾斜にて判断されております。一方、市場におけるハンドルに荷物を掛けた状態での転倒再現試験は3.9kgのダミー人形を乗せた状態でハンドルに荷物(3kg)の有無によるものとなっております。
そのうえで「仮に新たなベビーカーを開発し、対応傾斜角が向上しても、転倒しない商品は現実的には難しく、お客様訴求は非常に難しいと考えます。」と述べています。基準の試験条件と、実際の使われ方を再現した試験の条件が違うという指摘です。
商品テスト部は、ホイールベースを伸ばす、重心を低くする、ハンドルの位置を変えるなどの方向性を挙げ、荷物の影響がより小さいベビーカーの開発を求めています。将来の商品開発への要望として書かれているため、この資料からは、いま売られているものを選び直せば解決する、とは言えません(テストは7銘柄で、市販されている全製品の傾向ではありません)。
そして、坂は避けられません。国土交通省の「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会 とりまとめ」(平成26年3月)には、こうあります。
駅のホームは排水のために勾配がつけられており、ベビーカーの車輪のストッパーをかけずに止めておくと、動いたり線路に転落したりすることがある。
同じ資料は、使用者に求めることとして「ベビーカーを線路と平行にするなど止める向きに注意し、必ず車輪のストッパーをかけ、手を添えて目を離さない」を挙げています。
勾配の角度は書きません
国土交通省の資料には「排水のために勾配がつけられており」とあるだけで、何度なのかは書かれていません。駅や場所によっても違うはずです。「ホームの勾配は◯度だから転倒する」という計算は、この記事ではしません。言えるのは、平らに見える場所にも勾配が設計されていると公的資料が明記している、というところまでです。
なお同じとりまとめには、子ども連れの保護者は「ベビーカーを含めるとおよそ20kgの荷物を抱えて移動している計算になるとの調査結果もあり」という記述もあります(引用元の調査名は資料に明記されていません)。荷物が多いこと自体は、行政も前提として認識しているという補助線として読んでください。
実際に起きた24件は、どんなけがだったか
抽象的な角度の話を、けがの話に戻します。
医療機関ネットワーク事業には、ハンドルに荷物を掛けたことでベビーカーが転倒あるいはバランスを崩し、乳幼児がけがをした事例が少なくとも24件寄せられています。この24件を調べた結果です。
- 受傷者の年齢は7カ月未満が約8割
- 処置見込みは、入院や通院を要するものが約5割
- 受傷部位は頭部と顔面が9割以上
報告書に掲載されている事例を1つ引用します。
【事例3】上の子どもの手をつないで、片手でベビーカーを押していた。ベビーカーから手を離した瞬間、掛けていた荷物の重みで手前側に転倒し、下の子どもはシートベルトを装着していなかったためアスファルトに放り出され、頭部及び顔面を打撲した。[3カ月・女児、事故発生年月 2019年5月、要通院]
上の子の手をつないで、片手でベビーカーを押す。特別な場面ではありません。他の2事例も、駐車場のスロープを降りていた場面(1カ月・男児、外傷性くも膜下出血で7日間入院)、S字フックで荷物を掛けたまま腕で押しながら移動していた場面(3カ月・男児、要通院)でした。
共通しているのは、月齢の低さです。受傷者の約8割が7カ月未満。テストの結果とも整合します——乗っている子どもが軽いほど、ハンドル側の荷物の影響は大きくなるからです。ダミー人形の3.9kgに対して、掛けた荷物は3kg。ほぼ同じ重さが車輪より後ろ側に乗っていた計算になります。
24件は「少なくとも」の数字です
報告書の記述は「少なくとも24件寄せられています」です。医療機関ネットワーク事業は、参画医療機関を受診した事故情報を集める仕組み(2010年12月運用開始)で、受診に至らなかった事故は含まれません。また件数は本公表のために特別に精査されたもので、集計対象は2014年度以降受付・2019年10月末日までの伝送分です。全国の発生件数ではありません。
じゃあカゴは? 94%が使い、25%が「使いづらい」
荷物をカゴへ、と言うなら、カゴ側の実態も見る必要があります。
まず94%が既に使っています(カゴが付いていると答えた976人のうち918人)。使っていないのは58人だけ。「カゴを使いましょう」という話は、ほとんどの人にとって新情報ではないわけです。
問題は容量と使い勝手です。テスト対象7銘柄のカゴを調べた結果がこちら。
| 銘柄(テスト対象7銘柄) | カゴの容積 | 取扱説明書の最大積載重量 |
|---|---|---|
| カルーンエアーAB(アップリカ) | 16,000cm³ | 5kg未満 |
| ラクーナエアーAC(アップリカ) | 11,000cm³ | 5kg未満 |
| スゴカル4キャスLight エッグショックHJ(コンビ) | 12,000cm³ | 5kg未満 |
| メチャライト(コンビ) | 9,000cm³ | 5kg未満 |
| ココ ブレーキ(GMPインターナショナル) | 14,000cm³ | ベビーカーに載せる荷物の合計が5kg未満 |
| デ・ヨーネ レジェNAVY(西松屋チェーン) | 18,000cm³ | 5kg未満 |
| ランフィRA9(ピジョン) | 9,000cm³ | 5kg未満 |
※原資料の脚注:ランフィRA9について、報告書は「メーカー公式HPでは容積が『16リットル』と記載されています」と注記しています(報告書の算出値9,000cm³とは開きがあります)。ココ ブレーキにはポケット・ドリンクホルダーが併設されています。
容積は9,000〜18,000cm³とされていますが、この数値は「1辺10cmの立方体がカゴの高さを超えないよう無理なく収まる数」で算出した報告書の独自の値です。上の脚注のとおりメーカー公式の表示とは開きがある銘柄もあるため、銘柄間の数字を直接比べる用途には向きません。重量の上限は7銘柄とも5kg未満でした。
そして「使いづらい」の中身です。カゴが付いている976人のうち、245人(25.1%)が「使いづらい」と回答し、その理由がこうでした。
| 使いづらい理由(n=245・複数回答) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 荷物が出し入れしづらい | 192人 | 78.4% |
| スペースが不足 | 158人 | 64.5% |
| 位置が低い | 123人 | 50.2% |
| 荷物を入れていると折りたためない/折りたたみにくい | 85人 | 34.7% |
報告書自身も、カゴは背もたれを倒すなどの状態によっては立ったままでは中身が見えづらく、座面の下にあるため立った状態では手が届かない、特に子どもを抱くなどしゃがみづらい状態では出し入れしづらいと書いています。一方で、開口部を大きく設けるなど出し入れしやすい構造の銘柄もあったとも記載されています。
「使いづらいからハンドルに掛ける」は、感情論ではなく、構造の問題です。だからこの記事は「フックをやめて我慢しましょう」とは書きません。書けるのは、その使いづらさを引き受けるだけの差が、テストの数字に出ているということだけです。
「5kgまでなら大丈夫」とは書けません
上の5kg未満は、2019年に調査された7銘柄の取扱説明書に書かれていた値です。お使いの製品の上限は違う可能性があります。ある銘柄は「ベビーカーに載せる荷物の合計が5kg未満」という書き方で、カゴ単体ではなく全体の合計で規定していました。上限も、その上限が何にかかっているのかも、製品ごとに違います。必ず製品同梱の取扱説明書と、カゴに付いている警告ラベルで確認してください。判断に迷う場合はメーカー・販売店にお問い合わせください。
取扱説明書には、全銘柄に書いてあった
見落とされやすい事実として、書いておきます。
テスト対象7銘柄すべての取扱説明書などに、ハンドルに荷物を掛けると転倒しやすくなる旨の警告表示がありました。報告書の表から、実際の文面を1つ引用します。
カゴ以外のところに荷物をのせたり、ハンドルに荷物をつるさないでください。ベビーカーが不安定になり転倒してお子さまが落下するおそれがあります。また、ハンドルを無理に押し下げるなど、過度の荷重をかけないでください。
さらに、市販の荷提げフックそのものに言及していた銘柄もありました。
危険! ハンドルやサンキャノピーに、荷物などの重い物を乗せないでください。安定性を損ない本製品が転倒するおそれがあります。また、市販のベビーカー用吊り下げフックにつきましても使用はお控えください。
私はこの記事で、特定のフック商品を名指しして危険だとは書きません。書けるのは、ベビーカー側の取扱説明書に、こう書かれていたという事実までです。そして、これは2019年に調査された7銘柄の話であって、あなたの手元の製品に何と書いてあるかは、あなたの取扱説明書にしか書いていません。
私の場合、それを教えてくれたのはカゴに縫い付けられた警告ラベルでした。紙の取扱説明書は仕舞い込んでしまいがちですが、ラベルは製品に縫い付けられていて、捨てようがありません。押す前に一度読んでおく価値があると思います。開封したときの実物の様子は NUNA IXXA swivを開封 に写真で残しました。
荷物とシートベルトは、同じ話の裏表
同じテストで、乳児ダミー人形にシートベルトを装着しないで乗せ、さらにハンドルに荷物を掛けて後方に転倒させたところ、ベビーカーから投げ出されることがありました。装着した場合は投げ出されませんでした。
一方、アンケートでシートベルトを毎回装着させる人は654人(65.4%)。シートベルトを装着することがある948人(「毎回装着する」「装着することが多い」「装着しないことが多い」の合計)のうち362人(38.2%)は「一部省略して装着(肩ベルトを省略し、腰ベルトを装着など)することがある」と回答しています。前掲の事例も3件とも子どもが装着していませんでした。
荷物で倒れることと、倒れたときに投げ出されることは、別々の対策で別々に減らせます。座らせ方の話は、車のチャイルドシートの誤使用と構図が似ています(チャイルドシートの使用率と誤使用)。
この記事で断定していないこと
- 「◯kgまでならハンドルに掛けても大丈夫」。国民生活センター商品テスト部自身が「規格・基準が存在しない現時点で、当方が具体的数値を述べることは適切ではない」としています
- 「この製品なら転倒しない」。テストした7銘柄は全てSG基準の安定性を満たしたうえで、荷物を掛けると角度が下がりました
- 特定の荷提げフック商品の危険性。この記事はフック商品を評価していません。書いたのは、ベビーカー側の取扱説明書の記載と、公的なテストの結果です
- 71%を発生率として読むこと。1,000人中、転倒・転落を経験したと答えた286人の中での自己申告による内訳です
- お使いの製品のカゴの上限。5kg未満は2019年に調査された7銘柄の値です。駅のホームの勾配の角度も、公的資料に存在は書かれていますが角度は書かれていません
- 使用感。私はまだ第一子が生まれておらず、購入したベビーカーを一度も押していません
まとめ
- ベビーカーごと転倒した原因の1位は「ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物」203人(71.0%)。2位の段差・傾斜・障害物61人(21.3%)とは大差
- 荷提げフックを付けている人は732人(73.2%)で、後付け品の1位。買い物袋をフックに掛ける人は480人(48.0%)
- ハンドルに掛ける人620人のうち548人(88.4%)は「転倒のおそれがある」と考えたことがある。知らずに掛けているわけではない
- テストでは7銘柄すべてがSG基準の安定性を満たしたうえで、乳児ダミー人形(3.9kg)+3kgの荷物で、登り方向の転倒に至る角度が約17〜27度→約1〜12度(約15度減、背面の場合)
- 「何度以上なら安全」という判定は行われておらず、規格・基準も存在しない(商品テスト部の見解)
- ハンドルの荷物によるけが24件は、7カ月未満が約8割、頭部・顔面が9割以上、入院・通院が約5割
- カゴは94%が使用、容積9,000〜18,000cm³、上限は7銘柄とも5kg未満。一方25.1%が「使いづらい」(理由の1位は「出し入れしづらい」78.4%)
- これらは2019年8月のアンケート1,000名と、7銘柄のテストの結果です。全国の発生率でも、全製品の傾向でもありません
結論はシンプルです。荷物はハンドルではなく、カゴへ。そして、あなたの製品の上限は、あなたの取扱説明書とカゴのラベルにしか書いていません。
機種選びから整理したい方は ベビーカーの選び方、公式スペックの読み方は NUNA ベビーカー10モデル比較 をどうぞ。
出典・ご確認先(2026年8月15日に確認)
- 国民生活センター「ベビーカーの転倒による乳幼児の事故に注意-ベビーカーから転落し、頭部にけがを負い入院する事例も!-」(2019年12月12日公表/2024年11月21日更新):https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20191212_1.html/報告書本文PDF(全29ページ):https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20191212_1.pdf
- 国土交通省「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会 とりまとめ」(平成26年3月):https://www.mlit.go.jp/common/001032830.pdf
- 一般財団法人 製品安全協会(SGマーク制度):https://www.sg-mark.org/
※公表資料は更新されます。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。積載の上限や使用条件は製品ごとに異なるため、必ず製品同梱の取扱説明書、カゴの警告ラベル、メーカー公式の記載に従ってください。お子さまのけがや発育に関する判断は、自己判断せず医師にご相談ください。
関連記事:NUNA IXXA swivを開封/NUNA ベビーカー10モデル比較/ベビーカーの選び方/チャイルドシートの使用率と誤使用。カテゴリ一覧は 子育て・ベビー用品 へ。
よくある質問(FAQ)
ベビーカーの荷物はどこに置けばいいですか?
国民生活センターの調査(2019年12月12日公表/2024年11月21日更新)が消費者へのアドバイスとして示しているのは、ハンドルに荷物を掛けないことです。テスト対象となった7銘柄すべての取扱説明書などに、ハンドルに荷物を掛けると転倒しやすくなる旨の警告表示があり、そのうちの1つは「カゴ以外のところに荷物をのせたり、ハンドルに荷物をつるさないでください」という文面でした。置き場所として想定されているのは座席下のカゴで、調査対象の全銘柄の取扱説明書には最大積載荷重が5kg未満と記載されていました。ただし上限は製品ごとに違います。必ず手元の取扱説明書とカゴの警告ラベルの記載に従ってください。
ハンドルにフックを付けて荷物を掛けるのは、なぜ危ないのですか?
同調査のアンケート(2019年8月実施、1,000名)で、ベビーカーごと転倒あるいは子どもが転落したことがあると答えたのは286人(28.6%)。この286人に原因を聞いたところ、転倒の原因は「ハンドルや後付けした荷提げフックの荷物」が203人(71%)で最も多く、2位の「段差、傾斜、障害物」61人(21%)を大きく引き離しています。テストでも、乳児ダミー人形(体重3.9kg)を乗せて登り方向に静置したとき、転倒に至る角度はハンドルに3kgの荷物を掛けない場合が約17〜27度、掛けた場合が約1〜12度で、約15度小さくなりました(背面の場合)。
何kgまでならハンドルに掛けても大丈夫ですか?
その基準はありません。国民生活センターの商品テスト部は、公表ページに掲載された事業者とのやり取りの中で、今回のテストは「ハンドルに荷物に見立てた3kgのおもりを掛けた場合と掛けていない場合について、転倒に至る角度の差を調べるために実施したもので、何度以上であれば転倒しにくい(安定性がある)と判定しているものではございません」と述べ、さらに「ハンドルに荷物を掛けた状態での転倒のしづらさについて定めた規格・基準が存在しない現時点で、当方が具体的数値を述べることは適切ではない」としています。安全な重さの線引きは公表されていない、というのがこの資料から言えるところまでです。
座席下のカゴには何kgまで入れられますか?
テスト対象7銘柄の取扱説明書には、いずれも最大積載重量が5kg未満と記載されていました(うち1銘柄は「ベビーカーに載せる荷物の合計が5kg未満」という書き方)。カゴの容積は9,000〜18,000cm³で、銘柄間で最大2倍の差がありました。これは2019年に調査された7銘柄の値です。お使いの製品の上限は違う可能性があるため、必ず取扱説明書とカゴの警告ラベルで確認してください。
この調査はいつの、どういう調査ですか?
国民生活センターが2019年12月12日に公表し、2024年11月21日に更新した資料です。中身はアンケートとテストの組み合わせで、アンケートは2019年8月に実施、対象は子どもがいてベビーカーを所有・使用しており、最もベビーカーを使う子の年齢が4歳未満の男女1,000名(20〜50歳代、男女比1:1)。テストは販売数が多いと考えられる乳幼児1人用ベビーカー7銘柄が対象で、検体購入は2019年9月です。公表から5年以上が経っており、7銘柄は全製品の傾向ではありません。
転倒しにくいベビーカーを選べば解決しますか?
この資料からは、製品選びで解決するとは言えません。テストでは全7銘柄がSG基準の安定性を満たしていました。それでもハンドルに3kgを掛けると転倒に至る角度は約1〜12度まで下がっています。国民生活センターは事業者・業界への要望として「ハンドル周辺に荷物を掛けて使用することを想定したベビーカーも商品ラインナップに加えるなど、さらなる商品開発の検討を要望します」と書いており、これは裏を返せば、テストした全銘柄がハンドルに荷物を掛けて使うことを想定していなかったということです。